2003年10月
映画のキャラクターを作るにあたってのあなたの役割は?
彫刻家の仕事はキャラクターを立体化することです。私はキャラクター・デザイナーでもあるので、自分でデッサンすることもあります。例えば、今制作している映画で言うと、まずキャラクターについて外見やストーリー上の役割、性格など詳しい設定をディレクターから聞きます。コンセプト・デザインを見ながら、ディレクターのイメージに合う点、合わない点も教えてもらいます。
次に、キャラクターのイメージをデッサンで膨らませていきます。イメージがだいたい固まってきたら、ワイヤー製のスケルトンで骨組みを作り、そこに油性粘土でおおまかな形を作っていきます。
そして外観を整えながらしっくり来るまで仕上げていきます。キャラクターが実体化するのはこのときからですね。最後に細かい線やディテールを調整し、表面をならして仕上げます。
キャラクター・デザインができあがっている場合の彫刻のプロセスは?
キャラクター・デザインは通常、デッサンを担当するアーティストが紙に書きますが、彫刻を担当する私たちが何となくイメージできるようなラフなデッサンがほとんどです。ほぼ完成形に近い詳細なデッサンが提供される場合もあります。
どうやってキャラクターの性格を表すのですか?
キャラクターについての情報をできるだけ集めることが重要です。キャラクターの性格は彫刻 を大きく左右します。性格によって姿勢や立ち方が大きく変わってくるからです。気難しい人は、普段からむすっとした表情をしているでしょう。だからそういう場合は、それが分かるような表情にします。どちらかというとムっとしているように見える表情を作るわけです。私はオフィスに鏡を置いていて、彫刻のポーズや顔の表情を作るときに、鏡の前で実際に自分でポーズしたり表情を作ったりして確認しています。またキャラクターを特定の俳優に似せて作ってほしいと言われることもありますが、そんなときはその俳優の資料を探して研究します。
アニメーターのニーズを考えながら彫刻を制作しているのですか?
はい。キャラクターの彫刻には、さまざまな要素を反映させなければなりません。例えば、「鼻が大きすぎないか。アニメーターの扱いやすい形になっているか」などです。鼻が大きすぎると、キャラクターを斜め前から見ると片方の目が隠れてしまいます。これではアニメーターが動作を描きにくくなります。ですからたいていの場合、キャラクターのデザインを作ったらアニメーターに見せて問題点などを指摘してもらって煮詰めていきます。
キャラクターの見かけががきちんとしていて、かつアニメーターが動かしやすいようにするにはどうしたらよいか考え直すのです
。
ディレクターの承認後、彫刻をスキャンしてコンピュータに取り込むのですか?
完成したキャラクターの彫刻は、キャラクターのデッサンや色付けなどのさまざまな作業の参考資料として写真を撮ります 。
マケット(ポーズや表情、感情でキャラクターの性格を表現する彫刻)は、コンピュータ・モデラーの資料として使われます。この場合は、モデラーが直接コンピュータを使ってフリーハンド でキャラクターを描いたり作ったりします。一方、デジタル化できる彫刻(キャラクターの頭、腕、足に特別な動きやポーズをつけず、ニュートラルな位置にしてあるもの)は、デジタル化ツールのスタイラスを使用してコンピュータに取り込みます 。スタイラスで彫刻の表面をなぞってクリックすると、コンピュータがスタイラスの位置を読み取って、正確なデジタルコピーを作成します 。
また、技術的な必要性に応じてレーザー光線を使ってコンピュータに取り込み、調整する場合もあります。
彫刻のスキャン方法はどうやって決めるのですか?
ディレクターが高精度のコピーを求めている場合は、元のキャラクターの彫刻から型をとりプラスチック性のレプリカを作成します。このレプリカの表面にある格子状のグリッド線を使ってコンピュータに取り込みます。また元の彫刻をスキャンする場合もありますが、これはたいてい主役級のキャラクターに限られます。彫刻をフリーハンドで作成 できるかどうかは、キャラクターの特徴が明確かどうかにもよります。キャラクターが極めて個性的な特徴をたくさん持っている場合は、フリーハンドでの作成は簡単です。特徴が微妙であればスキャンしたほうが良いでしょう。キャラクターの顔の形やディテールが微妙であればあるほど、キャラクターをイメージ通りに見せるのは難しくなるからです。
今の仕事で一番難しいことは?
デザインをシンプルに保つことです。私は解剖学を学んでいるので、リアルな彫刻は比較的簡単に作れます。しかしアニメーションでは、キャラクターの個性が求められます。そのためには重要な特徴を誇張し、その他の部分はできるだけ目立たなくする必要があります。キャラクターの簡単な紹介のようなものですね。複雑な感情や個性を伝えると同時にシンプルな形を保つことが一番難しい点です。
一度に複数の映画を担当することはありますか?
約5ヶ月の間に同時に2本の映画を担当することもありますが、そのような場合は大変です。ディレクターはそれぞれ自分のスタイルを持っているので、ディレクターごとに仕事のやり方を変えなければなりません。
彫刻を始めた経緯を教えてください。
私は、アート系の仕事をしているわりには美術学校出身ではありません。子供の頃から絵を描くのが好きで、解剖学を勉強してみたり、恐竜の模型や小さな化石を集めたり色々と独学で勉強しました。インディアナ州でスピード写真の現像処理をやっていましたが、あるときはスタントマンに、またあるときはプロの重量挙げ選手になりたいとも思っていました。しかし兄弟 のアダムが、パレニアル・ピクチャーズという地元の小さなアニメーション・スタジオに入社したとき、私もアート関係の仕事に就くべきだと気づいたのです。私はその思いにすっかり憑りつかれてその気になってしまいました。
「ドラゴンスレイヤー」のビジュアル効果に圧倒されて、その思いがさらに高じてきた私は、北カリフォルニア州に引っ越しました。ビジュアル効果を手掛けていたフィル・ティペット氏の会社(バークレイのフィル・ティペット社、現在のティペット・スタジオ)で働けないかと考えたのです。ティペット氏にはインディアナ州から2、3度電話をかけておきました。そして引っ越した日に電話して、その日のうちに彼のオフィスに押しかけ、自分の作品や映画、ビジュアル効果に関する制作物を見てもらいました。キャラクターの動きをストップモーションで見せたり、レーザー光線を使ったりしたスーパー8ミリ映画の画質は最悪でしたが 、ティペット氏は、自動車用のパテと台車で作った動く骸骨人形に一番興味を持ったようでした。そして私はプロダクション・アシスタントとして採用され、模型作成や彫刻に携わるようになり、やがてフォームラバー製の人形を使ったストップモーション・アニメの制作に携わるようになったのです。
それから映画業界でのキャリアが始まったのですね。
はい。「ミクロキッズ」、「ロボコップ2」、「ゴーストバスターズ2」などで、模型の作成からカメラまで一通りの作業を担当しました。「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」では、初めて1人でキャラクターの彫刻を担当しました。あの映画の仕事は実に楽しかった。でも皮肉なことに、以来数年間映画の仕事から離れることになってしまいました。ひと休みして新しいことに挑戦したかった。そして「ジュラシックパーク」から急速に発達してきたCGの世界でやれることはないかと考えるようになりました。その後映画業界に復帰し、「マルコヴィッチの穴」で人形の制作と動作を主に手がけたイメージズ・イン・モーション社に入社し、おもちゃのプロトタイプ作成を中心に担当しました。ピクサーに入社したのは2000年です 。
彫刻に興味を持っている人へのアドバイスをお願いします。
とにかく描いて造ること。1つの作品ごとに多くを学ぶことができます。絵を描くことで、周辺や輪郭や平面で物をどのように見せるか考えるようになります。また、常にラフな全体像に注意すること。これらの積み重ねが優れた彫刻につながります。
動物園の動物や、人間の顔や姿など、生きたモデルを描くのは最高の訓練になります。実際に見たものは彫刻の中に写すことができるからです。絶対に逆らえない自然の法則というものがあるのです。
当社の映画、アニメーションの詳細について、または業界への就職についてのお問い合わせは、米国サイトのFAQ(英語)をご覧ください。
|