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インタビュー
2003年10月

「Mr.インクレディブル」のスーパー・バイジング・エディターとしてご活躍ですが、どのような仕事をされているのですか?

私は、スーパー・バイジング・エディターですが、この映画の編集は、基本的に私がすべて行っています。ディレクターと頭を突合せながら構成やタイミング、カメラアングル、被写界深度を考えて、各シーンで最も効果的なショットを選びます。制作の早い段階から最後の細かい仕上げまで面倒を見るのが私の仕事です。

私は、セットデザインや照明、アートデザイン、レイアウト、音響効果、音楽などの担当スタッフとディレクターとの間の橋渡しをしながら、ショットをリールに編集していきます。また、アシスタント・エディターや外部のエディター、制作アシスタント、コーディネーター、マネージャーをまとめながら、みんなと力を合わせて映画の編集作業を行っています。

実写とアニメーション映画の編集作業はどう違うのですか?

実写だと、シーンを何度か撮影した後に一番良いショットを選んで場面を作ります。アニメーションの場合は絵コンテを編集します。何かを強調するためによりダイナミックなショットが欲しい場合は、ストーリー部門にそのショットを注文します。

編集プロセスを簡単に説明してください。

まず、ストーリー部門が台本に沿って絵コンテを出します。何度か修正した後、絵コンテは「アビッド」というデジタル編集ツール(フィルム編集システム)用に、デジタルフォーマットで編集に送られてきます。編集では絵コンテを編集して台本に「命を吹き込む」、つまり台本を動く画像に変えていくわけです。ここからキャラクターやストーリー、緊張感やアクションを確認しながら、必要に応じて肉付けしていくのです。大事なのは、一番初めの青写真の段階で、できるだけ完成度を高めておくことです。なぜなら実際のアニメーション制作は、時間もコストも非常にかかる作業だからです。

カットの段階で「試し」音声を収録します。これは通常ピクサーのスタッフで行います。これを私たちがデジタル化して「アビッド」に取り込み、音響効果や音楽を追加します。基本的に絵コンテを見るだけで、できるだけ映画に近い形を想像するようにしています。

実際の声優によるセリフの収録はいつ行うのですか?

一般的には映画制作のゴーサインが出た後です。ディレクターは、早い段階から映画の声優候補を決めているもので、スタジオに企画を売り込むときにもこれは重要な要素です。ゴーサインが出たら、声優に出演を交渉します。収録された音声(セリフ)は、編集者とディレクターがリールに入れ込みます。そしてレイアウトに送ってカメラとセットを調整し、アニメーションと組み合わせます。

「試し」音声に思い入れはありませんか?

それはいつものことです。新しい声優が演じたカットを見ると、最初は誰でも「何か感じが違う」と思います。何せ「試し」音声を1年半も聞いてきたのですから。しかし新しい声を繰り返し聞いて慣れてくると、「試し」音声よりもはるかに良くなってきます。彼らはプロでそれで生計を立てているわけですから当然ですね。

ストーリー・アーティストから全ての絵コンテが届いた後はどうなるのですか?

絵コンテのカットで全員がその出来に満足したら、「アフター・エフェクト」というカメラ動作の作成プログラムを実行します。「アフター・エフェクト」は「Mr.インクレディブル」の監督であるブラッド・バードが最も活用するツールの一つで、これによってどのカットがどういう効果を生むかが分かります。つまり、人が走るスピードや、どのくらいの速さでカメラを回せばよいのかが分か るのです。このおかげで、時間とコストが大きく節約できるのです。

編集作業の次の段階は?

絵コンテをレイアウト部門に送って、セットのデザインを作成します。3Dセットの準備が出来ると、アニメーション部門に回されます。ショットがアニメーション化され、チーフ・アニメーターと監督が承認した後、ショットは一つ一つ、順不同で編集部門に戻ってきます。私たちはそれらをリールにまとめ、スウェットボックス・セッションを行います。

スウェットボックス・セッションとは?

全部門によるショットのレビューのことです。ピクサーでは最近行うようになったのですが、この言葉は、昔のディズニーで、映像をチェックする部屋が小さい上に電球の熱のせいで暑くて、25人のスタッフが立ったまま、汗だくで映画を見たことに由来しているそうです。それをまねて、私たちは全部門のチーフを一部屋に集めて、台本を頭に描きながらショットを確認します。問題があればすぐに修正方法を考え、全部門を動員して変更を行い、終わったら編集部門に戻し、リールにして再度スウェット・ボックスを行います。

1つの映画には大勢のアニメーターが関わっていると思いますが、編集面で問題はありませんか?

つながりの悪いショットが非常に多いのですが、たくさんの人が関わっているから仕方がありません。私の仕事は、アニメーションのつながりをスムーズにすること。そのために、 いくつかのフレームを追加したり逆に削除したりします。毎日が削除と追加の繰り返しです。

アニメーション完成後の作業は?

照明効果と陰影付けを行います。最終的にショットは「アビッド」に再び戻され、写真技術部門に送られフィルムが作成されます。

「映画編集者は眠らない」という噂は本当ですか?きちんと睡眠をとれますか?

もちろん寝ていますよ。この業界では珍しい物静かなエディターだとよく言われます。私のアシスタント達は非常に優秀なので、私は安心して持ち場を離れることができます。自分の仕事を楽しむことが出来ると、より楽ですね。私は映画もこの職場も大好きです。私のキャリアはハリウッドから始まりましたが、だからこそピクサーの良さが人一倍分かります。ピクサーではハリウッドと違って、スタッフは人間らしい生活を送ることができるのです 。私は通常午前9時から午後7時まで働いていますがハリウッドではありえません。

映画編集を手掛けるようになったいきさつは?

もともと、この世界に入るとは思っていませんでした。私は父と同様、ビジネスの世界に進むつもりでした。父は営業マンで、南カリフォルニアの乳製品会社の部長を務めていました。そこで私は経営学の学位をとり、数年間スーツを着て営業の仕事をしましたが、自分には向いていないと思いました。1990年、私はフロリダ州に移り、あるハードウェア・ディーラーの下でコンピュータ・ソフトの営業を始めました。このディーラーは「アビッド」の初期バージョンを持っていて、興味を持った私は、仕事が終わるとソフトをいじっていました。そんなある時、私の姉が、実務研修で「アメリカの最も面白いホームビデオ」(America’s Funniest Home Videos)という番組のファースト・シーズンに関わりました。私が「アビッド」の良さを力説すると姉は「ロスアンゼルスのエディターは皆それを使っているわ。退屈しているならこちらへ来れば」と私を誘ってくれたのです。

それからどれくらいでロサンゼルスへ行ったのですか?

数カ月です。最初は「マイティ・モルフィン・パワー・レンジャー」という番組のプロダクション・アシスタントでした。そこからビジュアル・エフェクト・コーディネーターになり、アシスタント・エディターになり、最終的にアソシエイト・エディターにまで出世しました。その後はずっと編集畑で、「アイアン・ジャイアント」のアソシエイト・エディターを経て、ワーナー・ブラザーズで「バクテリア・ウォーズ 」を担当しました。MTVに移って少しした頃ピクサーの誘いを受けました。順調に来たと思っています。

映画編集を手掛けることで、他人が編集した映画の見方も変わりましたか?

映画を見て楽しいとは思いますが、単なる観客として映画に酔いしれることはできなくなりました。映画に入り込むことはめったにないし、見ていても、つい分析してしまう。映画を見るのは、新しい手法の勉強にもなるし、実際自分の技術を向上する有効な手段なのです。映画を見ることで、編集効率を上げたり、シンプルなカットでより強いインパクトを与たり、ミスを防止したりする新しい方法が見つかるのです。

尊敬するエディターは?

ウォルター・マーチは憧れの人。「ゴッドファーザー」シリーズや「地獄の黙示録」などさまざまな偉業を成し遂げています。今は常識でも当時は画期的だった技術をたくさん導入してきました。もちろんリー・アンクリッチも尊敬しているエディターの1人です。ピクサーはアニメーション業界の最先端にいますが、ピクサーの今日があるのはリーの手腕によるところが大きいでしょう。

映画編集に興味を持っている人にアドバイスをお願いします。

ハリウッドに行くこと、そして何事にも臆することなく挑戦することです。プロダクション・アシスタントだった頃、私は午後8時に仕事が終わると、その後2時間、現場で先輩エディターの仕事を観察していました。自分のやりたいことなら、プロダクション・アシスタントの仕事を引き受けて一生懸命働き、できるだけ多くを学ぶことです。会社に入るのが一番の難関ですが、それさえクリアすれば扉は開いたも同然です。チャンスをできるだけ生かすことです。自分の希望を相手に伝え、根気よくやることです。今の時代は、「ファイナルカットプロ」という編集ソフトと、映画をたくさん見れば、誰でも編集技術を身に着けられます。

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